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_WOODWORKS_

欅と砧

欅(けやき)は、非常に加工が難しい木材です。扱いを間違えると反ったり、割れてしまったりするのですが、きちんと扱えば、非常に重厚感のある木目の美しい素材として重宝されます。素材のクセをよく知ってものを作るのは、陶芸と同じです。

私のギャラリーの扉には、元々は江戸時代の豪商屋敷の大黒柱として使われていた欅(けやき)材を使用しています。けやきの美しさとキャラクターが私は大好きで、長年ギャラリーのドアに使いたいと思っていました。土と同じように木にも個性があります。そのため自分の方向性のあるべき姿の象徴として今回使用しています。

砧(きぬた)は、藁などを叩き柔らかくするための、いわゆる道具です。決して美術品でも、工芸品でもありません。ですが、これを道具としてではなく、一つのオブジェとして見ると、そのものの持っている造形の美しさに心魅かれます。自身の作品も、その用途を切り離して「ある造形物」として見たときにも、成立したものとしてありたいと考えています。

“民藝”と呼ばれる日本の木工品は、美しい形を作ることを目的として設計・製作されたものではありません。しかし、道具としての機能や素材そのものの魅力を追求した結果、美しさを手に入れることができました。

*民藝
民藝運動とは、1926年に、柳宗悦、河合寛次郎、浜田庄司らが提唱した生活文化運動。当時の工芸品の世界では、装飾を施した装飾品が主流でした。彼らは、名もない職人が作り出す生活道具を「民藝」と呼び、「美は生活の中にある」と芸術品と同じ位美しいものだと主張しました。地域の風土で生まれ、生活に根ざした民藝品には、その用途に基づいた「健やかな美しさ」があるとし、新たな美の見方や価値観を提案しました。これは、工業化が進み、大量生産品が徐々に生活に浸透してきた時代と関係があります。彼らは日本各地で「手仕事」の文化が衰退していくことを懸念し、近代化=西洋化の安易な流れに警鐘を鳴らしていました。民藝運動を通じて、彼らは物質的な豊かさだけでなく、より良い生活を追求しました。